薪ストーブを設置する際に欠かせないのが「煙突」です。
煙突は単なる排気管ではなく、薪ストーブの性能や安全性に大きく影響する重要な要素です。
適切な設計とメンテナンスを行わなければ、火災や煙の逆流といったトラブルになりかねません。
本記事では、薪ストーブの煙突に関する基礎知識を詳しく解説し、適切な設計や維持管理のポイントを紹介します。
薪ストーブを快適に安全に使用するために、ぜひ最後までご覧ください。
- 煙突の役割と重要性
- 煙突で発生するドラフトの仕組み
- 煙突設計時に考慮すべきポイント
- 煙突掃除の必要性と具体的な手順
- 煙突の設置方法と手順
▼「薪ストーブに最適な薪の種類を知りたい」方は下記をご覧ください。
煙突の役割とは?なぜ重要?

煙突の主な役割は、燃焼によって発生する煙やガスを屋外へ排出し、室内の空気を清潔に保つことです。
適切に設計された煙突は、スムーズな排気を可能にし、煙が室内に逆流するのを防ぎます。
煙突が適切に機能しない場合、一酸化炭素中毒のリスクが高まるため、安全性の観点からも欠かせません。
さらに、良好な排気が行われることで薪の燃焼が安定し、熱エネルギーを最大限に活用することができます。
そのため、薪ストーブを使用する際には、煙突の設計やメンテナンスに注意を払うことが重要です。
定期的な清掃や点検を行い、煙突が常に最適な状態を保つようにしましょう。
煙突で発生する「ドラフト」とは

「ドラフト」とは煙突内の温度差や気圧差によって生じる上昇気流のことで、薪ストーブの燃焼効率に大きな影響を与えます。
燃焼によって発生する高温の煙は周囲の冷たい空気よりも軽いため自然に上昇し、燃焼ガスを屋外へ排出するのです。
ドラフトが強すぎると、燃焼が早く進みすぎて薪の消費量が増えてしまいます。
一方でドラフトが弱すぎると、煙が室内に逆流したり、燃焼が不完全になり一酸化炭素が発生する原因となります。
適切なドラフトを維持するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 煙突の高さや直径を適切に設計
- 煙突を定期的に清掃しススの蓄積を防ぐ
- 外気温や気圧の変化に応じて給気口を調整
ドラフトを適切に管理することで、薪ストーブの燃焼効率を最大化し、安全かつ快適な暖房環境を実現できます。
煙突設計時のポイント
煙突設計時のポイントは5つあります。
それぞれについて解説します。
- ポイント①|材質
- ポイント②|立ち上がりの高さ
- ポイント③|横引きの長さ
- ポイント④|曲げ部分の数
- ポイント⑤|構造

▼「煙突を含めて薪ストーブの導入費用を知りたい」方は下記をご覧ください。
ポイント①|材質
材質はステンレス製が一般的です。
その理由は、鉄製だと煙に含まれる腐食性のある成分により錆びてしまうためです。
ポイント③|横引きの長さ

横引き(地面と平行になる部分)の長さは、上昇気流に悪影響を及ぼさないようにできるだけ短くする必要があります。
ポイント②|立ち上がりの高さ

立ち上がり(地面と垂直になる部分)は、上昇気流を発生させるためには十分な高さが必要です。
外の立ち上がりは横引きの1.5倍必要といわれています。
例えば、横引きが180cmの場合、外の立ち上がりは270cm必要です。
ポイント④|曲げ部分の数

曲げ部分があるほど上昇気流に悪影響を及ぼしてしまうため、できるだけ少なくする必要があります。
具体的には3つ以下が良いです。4つ以上になると排煙がうまくいきません。
ポイント⑤|構造
煙突の構造は、下記の2種類があります。
それぞれについて解説していきます。
- 種類①|シングル煙突
- 種類②|二重煙突
種類①|シングル煙突

シングル煙突は筒状の煙突で、煙突内部と外部の温度差が出やすいです。
そのためシングル煙突の場合は煤が溜まりやすく、メンテナンスにも時間がかかりますが、価格は安価で済みます。
種類②|二重煙突

二重煙突は煙が通る内筒とそれより一回り大きい外筒の二重構造になっています。
内筒と外筒の間に断熱材が入っているため、シングル煙突よりも燃焼効率が良いです。
二重煙突はお値段は張りますが、燃焼効率も最適となり、煤の付着を少なく押さえられます。
煙突掃除が必要な理由
煙突掃除が必要な理由は、2つあります。
- 理由①|火災を防ぐため
- 理由②|煙の逆流を防ぐため
理由①|火災を防ぐため

薪ストーブから発生した煙は、煙突内で冷やされることにより煤となり煙突内側に付着します。
煙突掃除をしないとどんどん煤が溜まっていき、その溜まった煤に引火し火災の原因となることがあります。
理由②|煙の逆流を防ぐため
煤が詰まると上昇気流が起きにくくなり、煙が逆流することがあります。
また薪ストーブを使っていない期間に鳥が煙突内に巣を作ることがあり、これも煙が逆流する原因となります。
煙突掃除の手順
煙突掃除の手順は以下の通りです。
自分で掃除をするのが難しい場合は無理をせずに専門業者にお願いしましょう。
- 手順①|道具を準備
- 手順②|室内側を掃除
- 手順③|室外側のT曲がり部分を掃除
- 手順④|室外側のトップ部分を掃除
手順①|道具を準備

下記のものを準備しましょう。
- 煤を入れるビニール袋
- ビニール袋を固定するガムテープ
- 手が煤で汚れないようにする軍手
- 煙突の内側を掃除するブラシ
- 煙突の外側を掃除する雑巾
- ほうき・ちりとり
手順②|室内側の煙突内部を掃除
まずは、以下の手順で室内側の煙突内部を掃除していきます。
- 薪ストーブを横に移動する
- 取り外せる煙突があれば、取り外す
- 煤が落ちてきてもいいように煙突にビニール袋をテープで固定
- ごみ袋の隙間からブラシを入れて煤を落とす
手順③|室外側のT曲がり部分を掃除

次に、以下の手順で室外側のT曲がり部分内部を掃除していきます。
- 室外側の曲がり部分のふたを開ける
- 煤が落ちてきてもいいように煙突にビニール袋をガムテープで固定する
- ごみ袋の隙間からブラシを入れて上下に動かし、煤を落とす
手順④|室外側のトップ部分を掃除

最後に、屋根に上がって室外側のトップ部分を掃除します。
十分に注意して実施しましょう。
煙突の外側に付着している煤をブラシや雑巾できれいにします。
煙突掃除の最適な頻度
薪ストーブの煙突掃除の最適な頻度は、最低でも1年に1回、春から秋のオフシーズンの間に実施することをおすすめします。
また、冬の間も煤がたまってきたら、こまめに点検・清掃を行うこともよいでしょう。
煙突の設置方法
煙突の設置方法は下記の通りです。
DIYも可能ですが、初心者には難しい作業なので専門業者に頼むことをおすすめします。
- 手順①|壁にめがね石を取付け
- 手順②|めがね石に煙突を通し固定

手順①|壁にめがね石を取付け

画像引用元: 楽天市場
めがね石とは、壁以上の厚みをもった四角形のセメント素材に煙突径に合わせた穴があるもので、壁貫通部の断熱材として使用されるものです。
床から180cm以上の位置にめがね石の大きさの穴を壁にあけて、めがね石をはめます。
壁の中には柱や筋交い(鉄筋コンクリート構造の柱の主筋を拘束する囲い筋)があり、それらを切断しないように注意しなくてはいけません。
手順②|めがね石に煙突を通し固定
煙突は、軒先より15cm以上、天井や壁より45cm以上離して下さい。
煙突が風などに倒されないように煙突用支持金具等で固定します。
煙突の笠の位置は、屋根より60cm以上高い位置につけて下さい。
煙突の設置位置を誤ると、煙で壁が汚れたり、風の影響を受けやすくなり排煙がスムーズに行われません。
まとめ
薪ストーブを設置する際に欠かせないのが「煙突」です。
煙突は単なる排気管ではなく、薪ストーブの性能や安全性に大きく影響する重要な要素です。
適切な設計とメンテナンスを行わなければ、火災や煙の逆流といったトラブルの原因になりかねません。
本記事では、薪ストーブの煙突に関する基礎知識を詳しく解説し、適切な設計や維持管理のポイントを紹介しました。
薪ストーブを快適に安全に使用しましょう!
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